私の手がける住宅の主要な部分の壁仕上げは、そのほとんどが塗り壁(左官)による仕上げです。
塗り壁材料としては、樹脂系のもの、珪藻土(ライム珪土を含む)、漆喰(しっくい)等さまざまなものがありますが、建て主の方の住まい方やお考えによってその選択はさまざまです。
今回は、この中から漆喰壁について少しご説明、ご紹介をさせて頂こうと思います。
(左の写真は漆喰を木こてで荒らし、その後金こてで仕上げたたたみの間)
まず漆喰自体についてですが、これは消石灰(生石灰を焼いたもの)を主原料として、これに布海苔(フノリ)・ツノマタといった海藻類等の膠着剤、ひび割れを防ぐため麻等の繊維質を加えて、水で練り上げたものです。
漆喰の建物は世界各国に数多く存在し、その歴史は世界では数千年前より、日本では1,300年程前にさかのぼります。
それは原料である石灰が世界各地で産出されるもので、漆喰そのものが建築素材として優れているからでしょう。
石灰は現在輸入ゼロ。国内生産で全てが賄える数少ない豊富な天然資源のようです。
(右の写真は漆喰を木こてのみでラフに仕上げた事例)
漆喰の特徴としては、
・防火性:防火性が高いので、古くは財産を守るための土蔵に使われました。
・調湿、防カビ性能:季節の変化に耐え、カビがつきにくい(材料自体が防カビ材)といえるものです。主成分である塩焼き消石灰の微細孔により高い吸放湿性能を有し、その性能は吸湿性で塩ビクロスの4倍、放湿性で12倍といわれ、結露を抑制し、室内のジメジメ感をとり除く材料です。
・健康素材:厚生労働省で定める特定化学物質(ホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレン)をはじめ、汚染物質や汚染の原因となる物質を含んでいません。また、化学物質過敏症の原因となるホルムアルデヒド(家具・フローリング等に含まれる)を化学的に吸着し、一度吸着したホルムアルデヒドは再度空気中に放出させません(主成分である消石灰の高アルカリ性(PH14程度)により、ホルムアルデヒドを化学的に吸着するので、物理的吸着と異なり安定的にホルムアルデヒドを吸着します)。
・消臭:高アルカリ性で多孔質の漆喰は、生活臭を吸着し、ペット、たばこ、焼肉等の臭いを吸着、軽減させるといわれています。
・遮音性:ペンキやクロスのように薄く仕上げることができるものではなく、一般には薄いものでも5mm程度の塗り厚となります(更に薄塗り用として開発されたものもありますが...)。これにより他の仕上材よりも遮音性が高まる仕上材といえます。
(左の写真は漆喰をでラフに仕上げた階段室)
なお、欠点としては、
・ひび割れ:乾燥後の収縮率が高いためひびが入りやすいものです。しかし最近のものはこの欠点もかなり解消されているようです。
また、国内メーカー品だけでなく輸入品を含め、さまざまな商品があります。
これらの中からどのようなものを選ぶかも、ひび割れや仕上げに違いがあります。
・汚れ:建て主の方に事前説明を忘れてはならない最も大事な点と考えていることですが、漆喰は、珪藻土や紙貼仕上材等と同様、吸水性が高い材料ですので、当然手あか等の汚れが付きやすく、また汚れが染み込むとクリーニングができるものではありません。
といったことが挙げられます。
以上のように種々の面で優れた性能を持つ「漆喰」ですが、これを採用するか否かは、この汚れを、自然な風合い、住まいの年輪ととらえることができるかどうかによって判断が分かれるものと考えています。
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