安い、早い、簡単な家づくり
先日、知り合いの弁護士さんとの話の中で、
新築した建築物でのさまざまな不具合による訴訟問題という、建築を巡るトラブル事例の話題が上りました。
・仕上材の不具合
・建築金物の不具合(金物は中国製とのこと)
・使い勝手(設計上)の不具合
等内容はさまざまです。
建築界を大きく揺るがした耐震偽装問題の発覚から、早いものでちょうど4年が経ちますが、相変わらず、明らかに欠陥と思われる建築が今だに造り続けられているのは、何とも残念なことです。
私の推測ではありますが、これらの問題はここ数年の不景気も起因しているように思われてなりません。
早く、安くといった建築主の要望も一因としてあるのでしょうが、作り手側も早く工事をすることで経費を抑えよう、安く工事を済ませて少しでも利益を上げようということによるものです。
もちろん、建築は慈善事業ではなくあくまで営利目的の業務ですので、これらの姿勢を否定するものではありませんが、造ることのプロである以上、ある一線は守られなければならないはず。
結局はモラルの問題であり、また質を保つためのシステムが機能していないことを示唆するものともいえるようです。
ところで、話が少し変わりますが、最近、
インターネットを使った住宅の販売
が増えているというニュースを耳にしました。
全国展開するハウスメーカーや住宅会社よる
「ネット販売住宅」
というもので、営業コストが大幅に削減できることでハウスメーカーでもローコスト住宅を手がけていこうというもののようです。
ホームページ上で家の間取りや外観を決めると、それに合わせて価格が表示されるというサービスのようで、価格が明瞭だということ。
・敷地や周辺環境といった条件はどのように反映される?
・素人の判断のみで家づくりの全てが行われること
・価格の明瞭さとは?。単なる項目分け?
・果たしてこれで納得できる家、愛着を持てる家づくりが可能?
といった懸念は多々ありますが、住宅をプラモデル化、キット化する発想はまさに、
「デフレ時代の住宅」
として象徴的なもののひとつではないかと思われるものです。
(戦後の復興期ともある面では共通するようですね...)
想像するに、家の基本仕様は
・基準ぎりぎりの構造
・ビニールクロスや新建材だらけの内装
・テカテカの合板フローリング
・廉価な既製家具
での家ではないか(?)とも思われます。
結局は、家というものを建て主の方が
「つくる家」とするか
「買う家」とするか
「両者の中間」のどのあたりに位置づけるか
という選択となる訳ですが...
上記、ネット販売というのは、住宅界の「ユニクロ」或いは「牛丼の松屋」といった感じで位置づければよいのでしょうね。
この傾向を否定するものではありませんが、
200年住宅、長期優良化住宅といった今の行政の考え方にも問題点は多いものの、より良い住宅をつくって後世にまで引き継げるものとしていこうという考え方とは、かなりかけ離れたものだとも思えるものです。
自動車であれば、通常のオイルやバッテリー、タイヤの交換等さえ行えば、今は10年位はほとんどメンテナンスフリーで走ってくれます。
一方で住まいの場合は、もっと長期的な視野で考えなければなりません。
一生を過ごすであろうことを考えると、現在は統計的に30~40年が住宅の平均寿命ではありますが、最低でもその倍は持たせるべきもので、その為には基本性能もさることながら、日常のメンテナンスが重要となります。
この時、ネット販売で安く簡単に手に入れたものが、長期的な視点で
使い勝手や品質としての不具合がないものかどうか
生涯納得できる家かどうか、
愛着をもって維持する家かどうか
疑問に感じるのは私だけではないと思います。
安物買いの銭失い
となってしまっては、取り返しがつかないものです。
今のような時代だからこそ、
じっくりと考えた納得できる家
充分な基本性能を持たせた家
を個人の資産として、また社会の資産として築くべきだと思うのですが...
この年末に考えさせられた家づくりに関わるふたつのエピソードでした。
最後に
今回はいつも以上に長々と書いてしましましたが、これが今年最後の書き込みになると思います。
一年を締めくくる話題であったかどうかは別として、
来年も、建築やその他個人的な日常の話について、
時間の許す範囲でではありますが、書いていこうと思っていますので、
よろしくお付き合いの程お願い申し上げます。
それでは皆様、よいお年をお迎えください。
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